中 波 放 送 帯 コ イ ル 性 能 比 較
コイル好きな人、中波帯受信用アンテナに興味がある人への参考資料です。

このページは何年か前に、CQ出版社 QEX Japan誌(年4回の季刊)に掲載した記事の追加資料です。

160 X 10mmフェライト・ロッド5本をパイプ内に収納し、線材を変えてインダクタンスとQ値はどう変化をするか実際に使用する周波数で測定比較します。

同一コアでUEWポリウレタン線と高周波特性が良いと言われるリッツ線で、どのような変化があるかが一番の興味点だと思います。

コイル部分は中央に340 - 360μHになるように巻いた状態で測定します。
※使用したパイプの外径:34mm  内径:28mm

何故、160 X 10mmフェライト・ロッドを5本パイプ内に収納した物を使うのか?

フェライト1本では太いリッツ線は巻きにくくなる(巻けなくなる)ので、パイプ径を太くしています。

LCRメーターで中波放送帯 500 - 1700kHzを1kHzステップでスイープ測定します。 

測定結果はCSV形式です。 テキスト または Excelで見る事ができます。 グラフ化は各自で。



測定に関しての注意点

◎160 X 10mmの良質フェライト・ロッドを使用しましたが、長さと太さが同じでも同じ性能にはなりません。 
   見た目は同じ様に思えても、メーカー、型番、材質の違い、透磁率の違いなどで性能は大きく変わります。
   良い性能を求めるなら、実際に使用する周波数帯で実測することを強く勧めます。
   経験では見た目で選ぶなら、表面がざらざらした物は中波帯と言われていても実際にはピーク周波数が800kHz付近
   と低めでした。
   中波帯には違いは無いものの、なんだか思いが外れました。
 アンプ回路があるラジオでは性能をカバー出来ますが、無電源ラジオではフェライトが命です。
 確かな物なら米国AMIDON社で販売されているフェライト・ロッドが良いですが、高いです。

μ=800なので、1MHzが上限です。


◎インターネットでスーパービッグアンテナの商品名で見つけることができます。
 大きさに魅力を感じて購入した人も居るかも分かりませんので今回は比較対象に含めました。
   実際にゲルマニウム・ラジオを組んでみた人は受信状況が体感できたと思います。
 ブログなどで紹介記事も見かけますが、測定したら実態が見えてきました。
    販売者は絶対に組んで受信していない!と断言できるレベルのびっくりアンテナと言えそうです。




線 種 は下 記 の 9  種 類 で す 。

● UEW / ポリウレタン線 0.28mm   0.45mm   0.65mm

● リッツ線  0.04mm  30本撚り  100本撚り  200本撚り  300本撚り  660本撚り

※スーパービッグアンテナのみ 0.1mm 80本撚り リッツ線

100kHz毎の比較データを表にしました。 ※1kHz毎の詳細データは下に記載しています。

上段がインダクタンス / μH   下段がQ値
0.28mm UEW線の外径は30本に近似しています。
0.45mm UEW線の外径は100本に近似しています。
0.65mm UEW線の外径は200本に近似しています。

周波数/kHz
0.1mm/80本
0.28UEW
0.45UEW
0.65UEW
  30本 
 100本
  200本
 300本
  660本 
500
390μH
48.9
354μH
323.18
368μH
258.85
363μH
209.37
354μH
329.35
361μH
777,67
361μH
633.17
362μH
1196.61
357μH
1267.4
  600
413μH
31.7
355μH
330.4
368μH
264.34
364μH
213.61
355μH
407.51
362μH
882.27
361μH
698.29
363μH
1283.02
357μH
1282.57
700
446μH
20.43
355μH
331.17
369μH
268.5
365μH
217.09
356μH
458.65
363μH
891.75
362μH
739.52
364μH
1344.91
357μH
1272.32
800
491μH
12.12
357μH
331.79
370μH
274.18
366μH
220.61
357μH
503.33
363μH
961.88
363μH
791.42
364μH
1288.79
358μH
1245.21
900
551μH
6.38
358μH
333.28
371μH
278.56
368μH
223.63
358μH
545.45
364μH
934.58
364μH
845.04
365μH
1277.92
358μH
1315.69
1000
582μH
3.09
359μH
327.06
373μH
280.22
369μH
223.84
360μH
581.95
365μH
944.79
365μH
840.77
366μH
1217.1
359μH
1221.51
1100
526μH
2.18
361μH
320.18
374μH
280.14
371μH
224.11
361μH
602.94
367μH
1035.04
366μH
812.46
368μH
1294.91
360μH
1147.73
1200
549μH
2.61
362μH
316.57
376μH
283.24
373μH
224.41
363μH
624.6
368μH
1048.44
368μH
838.27
369μH
1351.07
360μH
1145.94
1300
670μH
2.95
364μH
314.35
378μH
285.83
375μH
225.9
365μH
646.83
369μH
1097.71
369μH
886.49
370μH
1107.3
361μH
1154.07
1400
867μH
2.49
366μH
309.99
380μH
289.23
378μH
230.09
367μH
681.26
371μH
1069.61
371μH
908.35
372μH
1387.24
362μH
1161.59
1500
1120μH
1.54
369μH
296.77
382μH
285.36
380μH
229.19
370μH
676.72
373μH
991.85
373μH
886.54
373μH
1219.4
363μH
1097.66
1600
問 題 外
371μH
282.5
384μH
280.56
383μH
223.24
372μH
654.67
375μH
930.32
374μH
805.73
375μH
1162.26
364μH
949.93
1700
問 題 外
374μH
268.89
387μH
272.89
386μH
219.55
375μH
624,04
376μH
880.45
377μH
769.07
377μH
1018.44
365μH
917.02

左がスーパービッグアンテナです。 中波放送帯では、まともな性能は絶対に出ません!
周波数が上昇するとインダクタンスは大きくなり、Q値は急激に低下して使い物になりません。
同調回路を組んでも同調点が見つけられないかも。
性能は初めて見る、驚きのスーパーびっくりアンテナでした!






使用した線材の一例  0.28mm/UEW    0.04mm100本撚り   0.04mm300本撚り


今 回 使 用 し た 9  種 類 の 詳 細 デ ー タ で す 。

● UEWポリウレタン線   3種類   500 - 1700kHzを1kHzステップでスイープ測定

160x5_0.28uew.csv

160x5_0.45uew.csv

160x5_0.65uew.csv

● リッツ線 5種類  500 - 1700kHzを1kHzステップでスイープ測定

160x5_30本撚り.csv

160x5_100本撚り.csv

160x5_200本撚り.csv

160x5_300本撚り.csv

160x5_660本撚り.csv

● スーパービッグアンテナ  0.1mm 80本撚り   1 - 1500kHzを1kHzステップでスイープ測定

sb-1.csv



インターネットで購入したというスーパービッグアンテナの測定依頼があり、測定してみました。

Yahooオークションでバーアンテナを検索すれば、見つかります。

2023年6月23日現在、こんな説明文がありました。
●寸法:Φ35×200mm
●弊社の超極太フェライトバーにΦ0.1×80本のリッツ線を巻きました。
●改良しました。
  1)熱収縮チューブ採用
  2)リッツ線表面をポリミドTAPEで保護
●容量:340μH ±10μH
   1本1本、LCR METERで測定し、測定DATAを付属しております。
●取り出し線長:約200mm
●アンテナ固定用ホルダー&バンドタイ付属
●フェライトの端面は、少し欠けている場合もあります。ご了解の上お求めください。
●ゲルマラジオ用アンテナにどうでしょうか?


一番下が、スーパービッグアンテナです。  上の2本は以前に入手した物。
3本を並べてみました。  表面がざらざらして同じ材質の様です。

説明文の内容と若干違うので、改良前の物なのでしょう。
改良したから性能アップ! コアが同じなら何を改良しても無駄!に思えますが・・・


今回は細かく特性を見るため、測定結果は画像は少しだけ。

初めて見る驚きのQ値です。


1.5MHzでは更にQ値は低下!!

細かい実測データは ここをクリックしてください。 →  sb-1.csv   CSV形式です。 
テキスト または Excelで見る事ができます。 Excelでグラフ化してください。

データの見方
左から 周波数 1kHz から 1.5MHzまで1kHzステップ
              一番上の1000Hzを参照
              Ls  インダクタンス  例 3.49E-04 → 3.49 X 10の-4乗ヘンリー → 349μH
                    ※テキスト形式で読み込むと、348.947E-06と表示が変わります。 
              Q   21.24  無負荷時のQ値です。
              測定電圧:1V 他の測定条件も載せています。

40kHzでは346μH / Q:281.55    60kHzで347μH/Q:344.55なので、電波時計用のゲルマニウム・ラジオを想定しているのかもわかりません。 購入された方は、どの周波数を想定して販売しているのか問い合わせしてみては?
ただし、電波時計の周波数帯ではインダクタンスが少なすぎますが。

340μH近辺の1kHz時の測定データ付きになっているので、
ゲルマラジオ用アンテナにどうでしょうか?と書かれていたら
中波放送帯のラジオを想定してしまいます。

測定データを見れば一目瞭然で中波放送帯用の物では無く、100kHz程度までの低周波用途であるのは間違いないでしょう。

フェライト・ロッドは太くて長い方が感度が良い!!!
これは材質が良い場合の大前提と言うのが確認出来たと思います。
また、実際に使用する周波数でインダクタンスとQ値を測定するのが大正解です。
LCRメーターで測定したQ値は無負荷時のもので、コンデンサを付加した同調回路に外部アンテナやゲルマニウム・ダイオードを直結してゲルマニウム・ラジオにした場合は更にQ値は低下します。

怖い物見たさ、話のタネで購入してみますか?   
購入先に意見を聞いてみるのも良いかもわかりません。

2023年6月25日 Yahooオークションで友人が質問したところ、こんな回答があったと連絡がありました。



質問1の回答は中波のゲルマラジオにお勧めとありますが、この回答の後でオークションから消えていました。
購入された方は使えていますか?

2023年6月26日 今後の予定

いろいろ実験し技術向上に役立てるよう、バー・アンテナの比較方法を考えてみました。
1,120X10mmのバー・アンテナとびっくりアンテナの同調特性の違いを測定
    トラッキング・ジェネレータ/スペアナで500 - 1700kHz間のいくつかのポイントで測定します。
  ポリ・バリコンで同調回路を形成、Q値を低下させない目的でフェライト上に2次コイルを設け、スペアナで測定。
    ※コイルの変更だけで比較、バー・アンテナには同一レベルで測定。
 ついでに余裕があれば、唯一Q値が大きかった長波帯で測定を。

★スーパービッグアンテナを所有する方で、測定を希望する場合はお尋ねください。
 測定は秋葉原・マイクロ・パワー研究所店頭で所有者立ち会いの下で行います。


ところで・・・・ゲルマニウム・ラジオの回路は?
よく見かける、一番簡単な回路図で紹介されているのは同調コイルにポリ・バリコン、1N60等の検波回路を
全部接続しているのを見かけます。
コイルの両端にアースとアンテナを接続して出来上がり!
これでは同調コイルにいくら気を使っても全体の性能は上がりません。
同調回路にはポリ・バリコンだけをつなぎ、コイルの両側にアンテナ用コイルと検波用コイルを設けます。
何回巻いたら良いのか、位置はどこに?等は自分の環境で変える必要があります。
これで分離と感度面を向上することが出来ます。
夏休みに製作教室を開く予定があれば、これも試して欲しいです。
ゲルマニウム・ラジオは製作は簡単だけど、良く聞こえるとは限りません。
東京のように大電力局がいくつも有る場合は、分離が出来ない事も多いです。
同調コイル1つでは限界はあるけれど、かなり改善します。


1N60 → 1:2 ST-30互換トランス → セラミック・イヤホン



今回の測定に使用した測定器



★HIOKI    IM3536    4Hz - 8MHz LCRメーター

★テストフィクスチャ 9262
テストフィクスチャ 9261-10
テストフィクスチャ 9699  SMD用
4端子プローブ L2000  
ピンセットプローブ L2001
所有するテストフィクスチャの内、★が今回使用した物

測定周波数は4Hzから8MHz間で任意に設定できます。


表紙に戻る  Last Update:2023-06-23