F M ゲ ル マ ニ ウ ム ・ラ ジ オ の 製 作



このページは隊長のマイクロ・パワー研究所店頭で組み立てたFMゲルマニウム・ラジオの製作と受信テストの内容です。
2021年11月発売 CQ hamradio別冊 QEX Japan誌 No.41に掲載されました。
※掲載される記事は編集しているため、内容は一部異なっています。
追加受信テストなどは随時更新を予定しています。

大成功!  無電源のFMラジオを作って聞こう

数年後にAMラジオ放送が終了するというニュース、皆さんもご存じかと思います。
今まで無電源ラジオはAMラジオしか体験したことがなかったのですが、この機会に無電源FMラジオに挑戦することにしました。

無電源FMラジオは受信が難しい、とはよく聞いていました。
しかし、「難しい」と「不可能」はイコールではありません。先に言いますと今回受信に成功しています。
また、今回は東京タワーのふもとにある芝公園をターゲットとしています。
コイルの具合などはラジオをお使いになる環境によって変わることを念頭に置いてご覧ください。

ともあれ、FMラジオを作らなければ始まりません。
FMラジオとAMラジオは見た目にも違いがあります。
トランジスタのFMラジオにはロッド・アンテナが付いているものが多くあります。
外部にアンテナを出す必要があるということです。
今回はラジオ本体と外部接続のダイポール・アンテナを製作します。



はじめに

2021年6月15日 民放AMラジオ全47社でつくる「ワイドFM(FM補完放送)対応端末普及を目指す連絡会」の44社が「2028年秋までにFM局となること」を目指すと発表された事は、時代の流れとは言え多くの中波ラジオ愛好家に失望を与えました。
中波放送が停波されれば、無電源で聞くことが出来るゲルマニウム・ラジオは使えなくなる、FM放送はゲルマニウム・ラジオで聞くことが出来ない、radikoで聞けば良いじゃないかなどの意見が掲示板などで散見されます。
NHK以外に一部の民放局が存続する意向だそうですが、今後の動きが気になります。
今すぐに停波するのではないので、中波放送のゲルマニウム・ラジオを停波するまでに製作する良い機会だと捉えましょう。

FM帯のゲルマニウム・ラジオは難しいと感じる方は意外に多いようですが、中波帯の同調回路部分を変更するだけなので製作そのものは難しくありません。
じゃあ、コイルの巻数やバリコンはどうなるのか?   本当にFM検波が出来るのか? と疑問も出てきます。
回路図を見れば分かりますが、中波帯と同じ回路でゲルマニウム・ダイオードも1本だけです。
FM放送波は周波数の変化で振幅も変化するので、同調を少しずらしスロープ部分を受信することで復調することができます。
これはスロープ検波と呼ばれ、FM検波方式では最も簡単なものです。
スロープ検波はダイオードを1つ使うだけなので、初めて製作するには最適ではないでしょうか。

とは言え、コイルは何回巻くのか同調バリコンは何PFなのか、それらの部品探しにも時間が掛かります。
今回は
ミズホ通信研究所の部品セットを使い、全国・電波ホットスポット探検隊員の細倉さんに製作と製作過程の留意点、実際に街中でホットスポットが見つかるかを挑戦してもらいました。

現在、東京では
東京タワーからTOKYO FM( 80.0MHz 出力10kW )とINTER FM( 89.7MHz 出力10kW )の2局が、
東京スカイツリー からJ-WAVE( 81.3MHz ) NHK-FM( 82.5MHz ) TBS( 90.5MHz ) 文化放送 ( 91.6MHz )  ニッポン放送( 93.0MHz )全 局出力は7kWで5局が放送しています。
その他にコミュニティFM局も10数局あり、同様に受信する事も可能です。
皆さんの地元局の周波数を調べて、ぜひFM帯のゲルマニウム・ラジオに挑戦してみてください。


実際の受信音声や、詳細な製作過程は文末に記載したURLでご参照ください。




●製作しよう!

今まで無電源ラジオはAMラジオしか体験したことがなかったのですが、
数年後にAMラジオ放送が終了するというニュースを耳にしてこの機会に無電源FMラジオに挑戦しました。
無電源FMラジオは受信するのは難しいと聞いていました。しかし、「難しい」と「不可能」はイコールではありません。先に言いますと今回受信に成功しています。
また、今回は東京タワーのふもとにある芝公園をターゲットとしています。コイルの具合などはラジオをお使いになる環境によって変わることを念頭に置いてご覧ください。

秋葉原でも部品の入手が難しくなっているので、ミズホ通信研究所で販売しているFMゲルマニウム・ラジオ部品セットを利用しました。
セット内容はケースの穴開け加工はありませんが、小容量のポリ・バリコンやコイル・データも公表されているので
そのまま製作すれば完成します。
今回はラジオ本体と外部接続のダイポール・アンテナを製作します。


部品セット    コイルは巻いてあります。  他にケースも含まれている。

部品リスト

1,タカチ SW-100  ケース   65 X 100 X 35mm
2,約3PF ポリ・バリコン 取り付けネジ付き  
3,ゲルマニウム・ダイオード NEC  SD60        
4,100PF セラミック・コンデンサ
5,1000PF貫通コンデンサ
6,ET-30( ST-30相当品 )   
7,BNC型メス・コネクター         
8,ロッドアンテナ   全長:約96cm   収納時:約19cm  7段     
9,イヤホン・ジャック    
10,コイル線材   1.0Φ UEW線/約75cm 0.7Φ UEW線/約30cm
11,セラミック・イヤホン プラグ付き 
12,同調つまみ( ミズホ通信時代のオリジナル )  
13,平ラグ板 3P  
14,ネジ類              
15,銅張・片面基板 銅箔部分が共通アースとなります。
16,タカチ CR-20  キーリング( ストラップ取付用 )



回 路 図

回路構成は中波放送帯のゲルマニウム・ラジオと変わりません。
同調回路をFM周波数帯に設定するだけです。

このFM無電源( ゲルマニウム )ラジオはスロープ検波で受信する事が出来ます。
※用語説明:スロープ検波(slope detection)とはFM波の簡易な検波方法で、共振回路の中心周波数の両側は傾き(スロープ)をもつ。この部分を使ってFM波をAM波として検波する復調方法である。復調感度,歪率などがあまりよくない。

一番簡単な検波方式なので、初めてのFMラジオ製作には良いと思います。



●同 調 回 路 部
 

初めて製作する場合に一番の難点はコイルとバリコン、つまり同調回路です。
コイルの巻径がXXmmで何回巻けば良いのか? バリコンはXXPFなのか?
測定器が無いとどうすれば良いのか悩んでしまい先に進めません。
同調周波数範囲は75MHzから100MHzを目標として、ディップ・メーターとQメーターで事前にコイルとバリコンの組み合わせを調べて再現性を高めています。

小型2.6PFのポリ・バリコンを使い、これに合わせてコイルを決めていきます。


※ポリ・バリコン 最大容量:2.6PF   最小容量:0.9PF    測定周波数:1MHz  NF ZM2376 LCRメーターで測定


使用するポリ・バリコンはとても小さく丸形でなんだかかわいらしいです。
このポリ・バリコンのローレット軸が長いので、ケースとの間に隙間を開けたくない場合は金ノコで少し切断するとよいです。

同調コイルの製作


同調コイル 1.0Φ UEW線 径:30mm 巻幅:25mm程度 7回巻

コイルについてはQ値が上がる様に巻径を大きく、誘起電圧を上げるために巻数を少しでも増やしたいと考えました。
巻幅を変えるだけでインダクタンスもそこそこ変化するので、あまり難しく考えないようにします。
巻数を4回から8回までの物を作り、75MHzから100MHzの範囲に入るかどうかの確認をします。
コイルの仕上り径について注意が必要です。パイプに巻き付けますが、パイプの直径が30oの物を使うと失敗します。
UEW線
( ポリウレタン線 )の弾性により、巻いた手を離すと30oよりもだいぶ大きくなってしまうのです。
私は直径25oのパイプを使い、いい塩梅に仕上がりました。
コイル部分の両端はヤスリで被膜を落とし、半田付けします。
ゲルマニウム・ダイオードを接続するポイントはアース側から2回目、3回目に。
同様に被膜を落として、半田付けします。
※UEW線は直接半田付けできますが、径が太い場合は事前に被膜を落としてから半田付けする方が
綺麗に仕上がります。   直接半田付けする場合は、40W以上の半田ごての使用をお勧めします。



アンテナ側の結合コイル 0.6 - 0.8Φ前後 UEW線 径:30mm  2回巻 

アンテナ側の結合コイルを同様に巻き、同調コイルに結合させ信号が一番良く受信出来るようにします。
検波ダイオードの接続点は、同調コイルのアース側から2回、3回目にタップを設けています。
どちらが良いかは実際に受信して決めてください。
同調周波数の調整は同調コイルの巻幅で微調整します。
巻幅が少なくなればインダクタンスが増え同調周波数は下がり、多くなれば同調周波数は高くなります。
76MHzから80MHzまでの間に限定するなら、巻数を8回にする方が良さそうです。



参考画像 試作段階で巻数毎にコイルの同調特性を調べているところ


QメーターでコイルのインダクタンスとQ値を測定してみました。  三田無線 Qメーター 661を使用



インダクタンスとQ値をQメーターで測定



測定周波数:25.16MHzにおいて インダクタンス:約1.25μH   Q値:約170
※実際に使用するのは76-95MHzなので、測定結果は参考値になります。


●ゲルマニウム・ダイオード   Germanium Diode

このセットはNEC SD60を使用していますが、1N34、1S34、1N60、SD60等が同様に使えます


上から◎東芝 1N60  NEC SD34  SD46  SD60   日立 1N34A

他に手持ちのダイオードがあれば試してみてください。



●出力トランス

サンスイ( 現、橋本電機 )ST-30  12.5kΩ: 50kΩの相当品 ET-30を使用します。


ラグ板に固定するため、あらかじめ足を曲げて半田あげします。


ジャンパ線は抵抗のリード線を利用
します。


裏面の片側一列、3つのハトメをジャンパします。

Point!   ラグ板に半田付けする際には、ハトメの穴を通して折り曲げると簡易的に固定されるのでこの方法がおすすめです。


100PFのセラミックコンデンサを固定します。リード線とつなぐのでまだはんだ付けはしません。

※100PF以外の容量になっている場合があります。


次にトランスを固定するため、あらかじめ曲げておいた足をはんだ付けします。



横から見ると・・


リード線が長いので短く切る・・但し、細いので自信が無ければ長いままに
します。
リード線を半田付けしていきます。


緑がアース側 赤が12.5kΩ(ゲルマニウム・ダイオードに接続) 黄が50kΩ(セラミック・イヤホンに接続)
Point!    リード線は適宜短く切ったり型番の書いてあるフレームの内側を通すとすっきり仕上がります。


下側3ヶ所も半田付けされているか確認
します。
※ジャンパの真ん中の部分は浮いてしまいやすいのでよく確認して下さい。


半田付け後の最終確認    トランスの半田不良、断線のチェック
緑と赤 および 赤と黄間が580Ω前後、緑と黄
間が1180Ω前後になっていればOKです。


予め、5cm程のリード線を半田付けします。


ケースの穴開け加工図  タカチ SW-100の参考例   

ケースに穴を開けていきます。まずは使用する部品を配置してみて、使いやすい位置を決めてください。



ポリ・バリコンの穴は基板に貫通させるので、ケースに2~3Φくらいの穴を開けたらケース内側に基板の位置を決めます。ここで失敗からの学びをお伝えして おきます。画像ではBNCコネクターから離れていますが、近いほうが後々作業しやすかったので、基板の位置はBNCコネクター側に詰めたほうがよいでしょ う。位置を決めたらケースの穴から基板にペンで印をつけ、ケースと基盤に8Φまで穴を開けます。

Point!    穴あけに焦りは禁物です。印をつけ、ピンバイスでアタリをつけ、細いドリルから徐々に大きくしてください。ここは急がば回れです。



●ケースに部品を取り付ける


予め、BNCコネクター ポリ・バリコンとロッドアンテナに使用する端子を半田揚げします。
基板は半田の乗りが良いですが、端子を半田揚げしておけば綺麗に仕上がります。


BNCコネクターを固定するのに便利な工具    名称:BNCコネクター用ボックス・レンチ?
コネクターの突起部分を挟むので、堅く締め付けが出来ます。



ポリ・バリコンとBNCコネクターのアース側端子を基板に半田付けします。

コイルを半田付けし、同調範囲の確認をします。


大体のつまみの位置 ↓


大体の位置です。 左から、80MHz付近 90MHz付近   ワイドFM帯/93MHz付近
ポリ・バリコンは360度回転します。 9時の位置が最大容量、3時の位置が最小容量です。

ディップ・メーターで同調部分だけを測定したので、アンテナ側の結合やコイル幅を変えたり、
ゲルマニウム・ダイオードを接続点を変えても同調周波数は前後にずれますから、実際に受信して周波数範囲を確認します。



ロッド・アンテナ端子とBNCコネクター、結合コイルの半田付け

同調コイルの2巻目、3
目にゲルマニウム・ダイオードを半田付けします。
2
目が良いか3目が良いか、実際に受信してから決めてください。
※この部分は製作者が納得するまで、別のタップ位置でも試してください。
    最初に1.5 2 2.5 3 3.5巻目に半田揚げしておくと良いと思います。
アンテナ側の結合コイルは、実際に受信しながら同調側コイルとの間隔を調整して良く聞こえる位置にします。


貫通コンデンサは半田メッキされていますが、基板に半田付けしやすくする為に左の様に半田揚げします。



基板に貫通コンデンサを半田付けします。  ※基板側にも半田揚げがしてあると綺麗に仕上がります。



ゲルマニウム・ダイオードと貫通コンデンサを半田付け、トランスの中点端子( 赤リード )に接続します。

トランス部分を取り付けます。

イヤホン・ジャックを取り付け、トランスからのリード線を半田付けします。


完 成 !    ※シールは含まれていません。

完成後、信号強度を確認するためにダイオードの検波電流を測定したい場合は・・・部品は含まれていません。
但し、送信所の近くで無いと電流はほとんど流れません。
メーターは50-100μA程度の物で足りると思います。 送信所と至近距離で強電界の場合は、分流器を考慮してください。
※東京タワー直下の芝公園では200μA以上流れます。

ダイオード検波出力とET-30トランスの間の電流を測定します。
測定しない時はジャンパ・ピンを挿しておきます。※ジャンパ・ピンは移動中に無くさないように注意!

必要な部品 ピン・プラグ / ピン・ジャック   ジャンパ用配線材 テスター( μAが測定できる物 )
メーターでもOKですが持ち運びには大きくて不便なので、小型のデジタル・テスターが便利です。
これだと分流器を用意しなくてもレンジ切換で済みます。


移動受信用・簡易ダイポール・アンテナ
について

BNCコネクターには2素子-8素子の八木・宇田アンテナや、ロッド・アンテナの簡易ダイポールに接続します。
ロッド・アンテナ1本でも使えますが、FM放送波は水平偏波なのをお忘れ無く。
アンテナを水平にして受信するのをお忘れ無く!

ゲルマニウム・ラジオの基本的な使い方は、アンテナとアースに接続します。
ロッドアンテナは全長96cmになります。 これでFM放送各局の1/4波長に合わせます。

東京地区・放送局の周波数と波長の関係

●移動受信用・簡易ダイポール・アンテナ 
屋外で受信する際に必要となるアンテナですが、ロッド・アンテナを2本使いダイポール・アンテナにしました。
使用時は両方向に取り付け、良く受信出来る地点を探ります。
ロッド・アンテナの長さは、各放送局の波長に合わせてください。
周りに人が居ないかを常に頭に入れて、移動する様にしてください。


完成画像  簡単ですが、効果はあります。


部品セットの内容


部品リスト  
1,全長96cm ロッド・アンテナ 2本
2,塩ビパイプ 短 X2      長 X1     T型 X1
3,BNCコネクター オス 1.5D2V用
4,1.5D2V 約2m
5,角形スペーサー X2
6,M3 25mm ネジ X2
7,M3 ナット X2   スプリング・ワッシャ X2
8,卵ラグ X2
9,パイプ・キャップ 黒 X1



ロッド・アンテナの取り付けに便利な角形スペーサーに卵ラグを取り付け、1.5D2Vの芯線と外被に半田付けします。

パイプ内に収納すると隙間が出来るので、一工夫が必要です。


隙間に入れる楊枝を数本用意します。


隙間にエポキシ系接着剤を流し込み、固まるまで一晩放置します。


キャップに3.2Φの穴を開け、1.5D2Vを通して接着剤で固定

BNCオス・コネクターに1.5D2Vを半田付けして完成です。


追記:小容量のバリコンが入手出来ない場合はどうすれば?   
秋葉原でも小容量のバリコンの入手が難しくなっています。
コイル径を大きくし巻数を稼いでQ値を上げたいので、バリコンは10PF以下にしたいところです。

入手しやすい260PFポリ・バリコンの利用例を紹介します。
直列にセラミック・コンデンサを接続すれば、合成容量で小容量化ができます。
※セラミック・コンデンサは必ず誘電損失の少ない高周波用を使用します。
手持ちのバリコンや、FM用のポリ・バリコン( 20PF + 20PF )が入手出来れば利用ができます。

●260PFポリ・バリコンを使用した例●



小容量セラミック・コンデンサを直列接続することで、小容量バリコンに早変わりします!
260PFポリ・バリコンの容量変化に対する直列接続時の合成容量です。
容量は実測値では無く、表記された数値で計算しています。
※合成容量の計算式は、文末の参考資料にあるURLを参考にしてください。
  
5PF と10PFの例です。
この下に記載した6PFと7PFの例だけでも良いと思います。
260PF+5PF直列接続 ↓
260PF+5PF直列接続 ↓ 260PF+10PF直列接 続 ↓ 260PF+10PF直列接 続 ↓
260PF - 4.90PF 40PF - 4.44PF 260PF - 9.62PF 40PF - 8.0PF
200PF - 4.87PF 30PF - 4.28PF 200PF - 9.52PF 30PF - 7.5PF
150PF - 4.83PF 20PF - 4.0PF 150PF - 9.37PF 20PF - 6.6PF
100PF - 4.76PF 10PF - 3.3PF 100PF - 9.09PF 10PF - 5.0PF
50PF - 4.54PF 5PF - 2.5PF 50PF - 8.33PF 5PF - 3.3PF


260PFポリ・バリコンの容量変化に対する直列接続時の合成容量です。
但し、容量は実測値では無く表記された数値で計算しています。

6PF と7PFの例です。
260PF+6PF直列接続 ↓
260PF+6PF直列接続 ↓ 260PF+7PF直列接続 ↓ 260PF+7PF直列接続 ↓
260PF - 5.86PF 40PF - 5.21PF 260PF - 6.81PF 40PF - 5.95PF
200PF - 5.82PF 30PF - 5PF 200PF - 6.76PF 30PF - 5.67PF
150PF - 5.76PF 20PF - 4.61PF 150PF - 6.68PF 20PF - 5.18PF
100PF - 5.66PF 10PF - 3.75PF 100PF - 6.54PF 10PF - 4.11PF
50PF - 5.35PF 5PF - 2.72PF 50PF - 6.14PF 5PF - 2.91PF


試験用コイル(1.0Φ UEW線 径:30mm 巻幅:25mm程度 6回巻)を使い、6PFと7PFの同調範囲を測定しました。
下限周波数が75MHzで上限周波数が100MHzを目標とします。
ポリ・バリコンは左側一杯( 9時の位置 )にして最大容量、12時の位置、2時付近の位置で測定しています。



260PF + 6PF 260PF + 7PF
最大容量時 82MHz
73MHz
12時の位置 85MHz 77MHz
2時の位置 100MHz付近 93MHz

同調範囲から直列用のコンデンサは7PFが最適となりました。



実 際 に 受 信 し て み て

完成後、近郊の5箇所で受信テストをしました。

1,東京スカイツリー直下
2,東京スカイツリー直近の浅草(隅田川沿い)
3,千代田区駿河台( JR
御茶ノ水駅近く )
4,港区芝公園(東京タワー直下)
5,千葉県市川市(JR総武線・市川駅横の
アイリンクタウン)


1と2の結果は東京スカイツリーの直下に行っても受信出来ません。 500m以上の所にアンテナが有り、真下には電波は落ちてきません。 2でかろうじて何か聞こえるかなと言う感じです。 ある程度の距離がないと受信出来ません。 
少なくとも2,3km離れていないと受信は難しい様です。


3は御茶ノ水駅近くにあるお茶の水ソラシティ(直線距離で4.2km)では、東京スカイツリーから送信されている5局が受信出来ました。   数10cm間隔で何度か移動し、各局の受信状況を確認。
J-WAVEが一番強く、他も少し移動すると聞こえなくなったり歪んで聞こえたり( これはスロープ検波の動作上、信号が弱いのが原因 )します。
道路を挟んで対面にも高層ビルが有り、そのビル下でも聞こえます。
このビル周辺がスカイツリーからのホットスポットになっている様です。
また、御茶ノ水駅から神保町方向の坂を下りる途中のビル前(東京スカイツリーは見えない位置)では、
ビルの反射によるホットスポットでJ-WAVEが際だった音量で聞こえました。



受信地3:直ぐ下に道路、JR中央線  右の高いビルは秋葉原ファースト・ビル
ちなみにアンテナを立てた状態では受信状態は悪いです。


受信地3: 斜めにしたり・・


受信地3: こんな感じにしたり・・いろいろ試さないと最適受信状態になりません。


4の芝公園は東京タワー直下で、アンテナは
東京スカイツリーの半分くらいの地上高330m付近ですが園内のどこでも良好に受信出来ます。 東京タワーから400-500mほどの至近距離です。
TOKYO FMとINTER FMはアンテナの向きが異なり、ダイポール・アンテナの向きを合わせる事で結構な音量で
聞くことができました。
この場所の利点は局間の周波数差が9.7MHzあるので、同調範囲の調整作業がやりやすい点です。





東京都港区・芝公園で受信している様子     正面の奥に東京タワー

芝公園では場所によってはスピーカーを鳴らせるところもありました。
検波電流を測りながら受信テストをしていると、中波帯と比べて大きな違いを見つけました。
中波帯では受信のピークで検波電流が最大になりますが、スロープ検波では電流値として30μA程度と200μAを超えたときで音量の差がほとんど感じられませんでした。
これは検波領域のスロープ部分が広くなり検波電流(直流分)は大きくなるけれど、音声信号は比例して大きくならないようです。電波が強いのに音量はそれほどでも無いので何か違和感を感じます。
この点も皆さんが実際に試してみてください。

●番外ですが、本物の鉱石で受信できるのか?   芝公園で追試してみました。
鉱石ラジオと言いながらゲルマニウム・ダイオードを使用している例が多くあります。
部品名は正しく認識しないと混同しますから要注意です。
本物の鉱石(黄鉄鉱)で実際に受信出来るのか、復調できても音質はどうなのかを試しました。
その時の受信した動画もありますから、文末の参考資料のURLをご参照ください。
鉱石はあまり感度が良くないですが、送信所間近では聞くことが出来ました。
市川市のアイリンクタウンでは受信可能な局が多く、混信状態でうまく復調出来ませんでした。
鉱石のポイント探しに少し時間が掛かりますが、音質は悪くないと感じました。


黄鉄鉱を使った本物のFM鉱石ラジオ



鉱石の固定部分    良く聞こえるポイントを針先で探します。


5は市川駅の直ぐ横に有り、3階から45階まで直通エレベーターで一気に展望デッキに行くことができます。
終日午前10時〜午後8時(土日祝日も開所)まで利用可能で、しかも無料なのは有り難いです。
展望デッキの高さは150mで、スカイツリーまで8.9km   東京タワー16.5kmと試すには良い距離です。
期待満々で出掛けたのですが、結果は混信状態で明瞭な復調ができず再挑戦をしたいと思います。
中波帯ゲルマニウムと違い、FMスロープ検波では音声を得るのにある程度の帯域(同調範囲)が必要となりFM局が
多い場合は混信状態で使い物にならなくなるようです。 これは多くの放送局がある都心ならではの贅沢な悩みですね。
市川市周辺のコミュニティFM局などを想定しなかったのが敗因です。
この場所は次回に再挑戦で受信につなげたいと思います。
この展望デッキはハンディV/UHF/SHFトランシーバーで楽しむには最適だと思います。

受信テストに際し、騒音を軽減するのにイヤホンは両耳タイプにしないと聞きづらいと思います。
騒音で聞きにくい場合を想定し、アンプ内蔵のスピーカーも用意すると良いです。
また、アンテナを振り回した時に十分に気を払わないと事故が起きるので要注意です。

今後は今回製作したゲルマニウム(鉱石)ラジオで受信して、受信報告書を各局に出そうと思っています。

課題:中波帯のゲルマニウム・ラジオと比較して   中波帯(AM)  FM帯(FM)

●AMと比較すると受信時の雑音(ノイズ)の影響が無い。
AMと比較すると遠距離受信が出来ない。
比較的近距離と思われる場所でもアンテナの問題がある。 
   外部アンテナが必須で、屋外にしっかりしたFM専用アンテナがないと厳しい。
●都内など多くの局がある場合は混信する可能性が有り、その場合は同調回路を再考する必要あり。




●参考資料

●スロープ検波について エレクトロニクス用語辞典より
   CQ出版社 トランジスタ技術編集部 https://www.cqpub.co.jp/term/slopedetection.htm


●コンデンサの直列接続と並列接続 https://www.geisya.or.jp/~mwm48961/electro/condenser2.htm

●BNCコネクターの取り付け方 
http://www.rocket-co.jp/ham/bnc_conne-make.html 

全国・電波ホットスポット探検隊 FMゲルマニウム・ラジオなどの紹介ページ
    JG1UNE  小暮さんのページ http://hotspot-tanken.club/kogure/radio.html
 JR1OAO  中島さんのページ http://hotspot-tanken.club/nakajima/radio.html

市川市 アイリンクタウン 屋上無料展望台 https://www.city.ichikawa.lg.jp/eco04/1111000055.html

FMゲルマニウム・ラジオ製作過程のページ http://mizuho-lab.com/fm/seisaku_katei.html

●本物のFM鉱石ラジオ・実際の受信動画  http://mizuho-lab.com/fm/SVID_20210916_142440.mp4













表紙に戻る